思わず泣けた! 『終戦のローレライ』

wakate2005-07-29

思わず泣けた。

上巻 2段組で453ページ、下巻597ページ。

一人一人の人物の書き分けがいい。
第五章の途中、伊507が目的を果たした所まで十分物語として完結していた。何で続きがあるのだろう、と思った。

今日、終章を読んだ。泣けてきた。戦争後を生きた、親父の姿がそこに重なった。
そうだ、この本の主題はここにある。戦争をくぐり抜けた日本の今を考えることに。

福井晴敏は、悲観論者ではない。
現実の不備を訴えつつ、それが人間のなすこと、だから希望もある、と説く。
初志の会、上田理論を彷彿させた。不思議な気分だった。


過日、NHKの番組に福井晴敏が出演していた。
子供の頃は、小説を読んだことがなかった、映画っ子だったと語っていた。
そうか、派手なアクションシーンもあるエンターテイメントだな、と思った。
亡国のイージス』を読んだ後だったので、
「そうか」と納得した。

終戦のローレライ』もその延長で読んでいた。
最初は、ローレライシステムという奇抜なアイデアの作品かと思った。

ところが、違った!

自分が今、生きていることについて考えた。
おろかで、歴史の中で同じ過ちばかりを繰り返す人類の歴史。

日本に生まれ、戦争が終わって生まれた自分。
戦争をどうとらえればいいのか、という問に一つの答えを出している。

海流に流される椰子の実になぞらえて人生を語る場面がいい。


「戦争の時代に生まれくてよかった」
「今の世の中は、戦争の時代を潜り抜けてきているのに、退廃していないか。自由を生かしきっていないのではないか」
そんな疑問に一つの答えをそっと用意してくれる。


終章の折笠征人の生き方。
会社と家を往復して、会社のために生きた人生を伊507に乗っていた時の姿と重ねると、
今の世の中に生きることの厳しさも伝わってくる。

福井晴敏が人気なのも肯ける。
何者だ?


文章が読みやすい。
ストーリーがいい。
戦闘シーンのエンターテイメントの要素もある。
そして、ヒューマン。


実は、今日、人間ドックだった。
終章の30ペーシは、病院の喫茶室で読んだ。人間ドックの病院で泣いていた私を見た人は何と思ったことだろう。

福井晴敏公式サイト http://www.fukuiharutoshi.jp/









長男の通う豊田西高校が、高校野球で県大会ベスト4まで進んだ。
今日は、ナゴヤドームで、春の甲子園優勝校・愛工大名電と準決勝。
息子は、電車で応援に行った。

今日はたまたま、人間ドック。終わって12時頃病院の喫茶室に行くと、NHKでやっていた。
名電のピッチャーもミスがあり、3対1としていた。

「勝てるかも」ちょっと気合が入った。
家に返ってきて聞くと、負けたとか。
それでも、少しだけ夢をみさせてくれた。
息子も、ナゴヤドームまで応援に行ったこと、いい思い出になったことだろう。
ありがとう。